大分市 暮らし
「本物」の体験と「生きる力」を身につけるさくらさくらんぼ保育【上野愛光保育園・上野愛光第二保育園】
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上野愛光保育園は、昭和27年大分市上野丘西の円寿寺(えんりゅうじ)境内に前住職である初代園長秦亮雄氏が「大分市立上野保育所」として開園。後に大分市の機構改革により社会福祉法人となり「上野愛光保育園」に改名しました。
そして、平成27年大分市から定員増の要請を受け、大分市六坊北町に新築移転。令和2年には「上野愛光第二保育園」も開園し、合わせて240名(定員それぞれ120名)となりました。
敷地は両園合わせて4,500坪あり、環境の整った広い園内で子どもたちは楽しく伸び伸びと過ごしています。この上野愛光保育園でさまざまな体験をし、未来に向けて「生きる力」を身につけています。
目次
人間に大切な土台づくり
上野愛光保育園は保育の神様と呼ばれる斎藤公子さんの保育、「さくらさくらんぼ保育」を実践しており、人間に大切な土台をしっかりと作る保育を行っています。
就学前の乳幼児期は「ヒトから人間」になる一番大事な時期であり、多くのものを吸収し成長していきます。成長にはリズム(過程)があり、順序を守って年齢に相応した保育を行えば身体の根っことなる土台がしっかりと育ち、色んなことに対応できる力となると上野愛光保育園の秦園長はお話をしていました。そのために実践している上野愛光保育園の保育をご紹介したいと思います。
まずは全身で夢中で遊ぶこと
園内では子どもたちが元気いっぱいに遊んでいて笑い声がたくさん聞こえてきます。子どもは全身を動かし遊ぶことで身体や脳が発達するので、ハイハイや水遊びや泥遊びなど太陽の下でたくさん遊ばせます。
水、砂、泥を手足や身体全体で触れさせ、神経回路の発達を促しているそうです。手先が器用になったり、体のバランス感覚を養ったり、創造力を高められます。子どもたちのやりたいことを尊重し遊ばせているので全身泥だらけになることも。みんなと自由に楽しく過ごすことで人と遊ぶことも大好きになっていきます。
遊びや食事を通し全面的に育てる
保育方針は子どもの身体(粗大な動き・微細な動き)、認識力、理解力、話す力、交わる力、身辺の自立などの能力を全面的に育てることを目標としています。
子どもたちが行う遊びや食事などを通して「視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚」の5つの感覚を偏りなく刺激したり、手足や全身を使って運動をし、背骨などの身体を発達させます。合わせてお友達や先生たちと交流することで社会性も身につけていきます。
親指と脳
園内の子どもたちはみんな裸足。赤ちゃんがハイハイするとき足の親指を蹴って進みます。座ったり立ったりするときも親指を必ず使います。親指を使わずに行うと体のバランスを崩し上手く立ったりすることができません。私たちが普段無意識に行っている動作の中で親指は使われています。
日常生活や運動などさまざまな場面で使われている親指。親指はとても大事で筋肉の発達に影響します。
そして、足の指を使うと脳の成長に関係するとも言われています。脳は血流が下がると落ち着きがなくなったり、考える力、判断する力などが弱くなります。足の指を動かし血流を良くすることで脳が活性化され、集中力などが高まります。
靴下や靴を履くと足の指を使えず床や地面を上手く蹴ることができなくなるため、上野愛光保育園では裸足で過ごさせています。
保育に適した環境づくり
保育園も家庭と同じように生活する場であるため、快適に過ごせる環境づくりをされていました。
子どもたちが遊び回れるようなスペースの確保や日当たりや風通しの良い部屋。屋内でも日光浴ができるようになっており、ハイハイをする子でも快適に過ごせるようにしています。お部屋は夏でもそよ風が入るくらい気持ち良いそうです。
その他には道路から少し離れたところに園舎が建てられているためとても静か。車の騒音や排気ガスなどからも守られています。お昼寝や本を読むとき、絵を描いてるときなど、静けさが子供たちを落ち着かせ、集中力も高まります。
そして、裸足で過ごす子どもたちを守るためにフローリングは柔らかいヒノキなどの木材を使用しています。1歳から3歳までは土踏まずがなくベタ足なので足を傷めやすかったり、子どもは頭が重いので転びやすかったりします。衝撃を吸収するやわらかい木材を使用することで子どもたちが安心して過ごすことができます。家を建てる時や引っ越し先を探す時と同じように保育園の環境も整えられていました。
安心安全な給食やおやつ
給食はすべて園内の給食室で作られています。主食であるご飯は耶馬渓の下郷の農家と契約し、栄養価が高く安全な無農薬の玄米を仕入れています。玄米のままでは子どもは上手く消化できないため米を3分づきにし、胚芽の部分を残し子どもでも食べれるようにしています。
おかずなどの食材や調味料なども国産に限定され、農薬や遺伝子組み換え食品が使われていないものを選び調理しています。健康で丈夫な体をつくるために安心安全な食を提供できるよう、細かなところまで気配りをされていました。
おやつもすべて園内で手作りされたもので、節句に合わせたおやつや、年長さんが育て収穫したお芋を調理したものなどが提供されています。
食育で五感を育てる
給食で使用する食器は全て陶器。食育の一環として子どもたちが食べる際に使う食器の材質も重要だということで、食器は割れないメラミン素材ではなく、普段大人たちが使用している本物の陶器で食事をさせています。
人は「視覚・聴覚・触覚・味覚・嗅覚」の五感で食事をします。食材の色や艶、形や盛り付けといった視覚。サクサク、パリパリといった歯触りや歯ごたえの聴覚や触覚。甘い、辛い、すっぱい、苦い、しょっぱいなどの味覚。食材の香りや調理の香ばしいにおいなどの嗅覚。人は食事をするときに色んなものを脳で感じ取ることによって「おいしい」と感じます。しかし、それは料理だけでなく盛り付けられた器の材質の違いでも異なり、「おいしさ」に大きな影響を与えます。
園長は「例えば喫茶店で出てきた飲み物が陶器で出てきたものと紙コップのものどちらが美味しそうに感じますか?」とわかりやすく例えを挙げてくれました。もちろん陶器で出てきた方が美味しそうに感じると思います。中身が一緒だと言われても見た目やコップを手に取ったときの感触、口に触れたときの触覚などの違いにより「見た目」や「おいしさ」に違いが出ます。
陶器には陶器の価値がある。子どもたちも小さい頃から美味しそうに見える本物の食器で食べ、五感を刺激し、豊かな感情を育ててほしいという願いが込められていました。
子どもの頃から本物の体験を
保育園ではテレビやビデオを一切見せません。絵本や紙芝居、人形劇やコンサート。山や海で自然との直接的なふれあいなど生で体験できるものを与えています。実際に見たり体験すれば感動したり心動かされる機会も増え、感じたこと楽しかったことを言葉で表現できるようになってきます。
小学校になり文字を書けるようになった時、読書感想文などで文章力や表現力に違いが出てくるそうです。感情を伝えることも上手くなるのでコミュニケーション能力も身につきます。
書き取りや塾は禁止?早期教育をさせない
上野愛光保育園では「あいうえお」などのひらがなや「ABC」などの英語などの書き取りをさせないようにしています。
学力に差がつく要因は読み書きを始めた早さではなく、幼児期に培った言葉の表現力にあります。子どものころにたくさんのことを体験し、先生や友達とたくさん会話することで豊かな表現ができるようになります。
最初は書き取りをしていた子と差が出てしまいますが、小学校で子どもは文字に興味を持ち、どんどん吸収するのであっという間に追いつきます。
ハンディキャップの園児の取り組み
ダウン症のあるお子さんや発達障がいを抱えるお子さんも数名いらっしゃると思いますが、みんな同じように保育されている印象です(保護者談)。
ハンディキャップを持った子の保育では、普通の子より時間をかけて体を作っていく取り組みを行っています。どんな個性を持った子でも育ちの道筋は同じ。手足や全身を使い、水遊びやリズム遊びなど保育内容は同じです。
ステップアップするまでの経験値が普通の子より少し多いので、成長に合わせてゆっくりと土台を作っていきます。
上野愛光保育園の施設情報・保育詳細
保育時間
利用可能な時間は保育の必要量(就労状況等)によって異なります。
保育標準時間 月曜日~土曜日 7時~18時 (11時間)
延長保育 18時~19時
保育短時間 月曜日~土曜日 8時~16時 (8時間)
延長保育 7時~8時、16時~19時
休園日
日曜日・祭日・年末年始
呼び出しについて
呼び出しは保育士さんが体温、状態などを見て総合的に判断し、呼び出しが必要であれば電話連絡をしてくれます。
上野愛光保育園にお子さんを預けている保護者さんからの口コミでは、「乳幼児は体温調整が難しく、高くなったり低くなったりするので、高い体温が計測されても少し様子を見てくれるのがありがたい。」「もちろん人によると思うのですが、呼び出しされた回数は数えるほどでした。乳幼児の頃から土や水、太陽にふれる機会が多く、体づくりに注力しているからかもしれません。」とおっしゃっていました。
送迎・駐車場
送迎バスなどはありません。保護者の送迎のみになります。駐車場はありますが、ピーク時は混み合うこともありますので、余裕を持った送迎をおすすめします。離乳食を食べている子は8時30分までの登園を求められます。
お弁当の日
夏場の暑い時期を除き、月に一度お弁当の日があります。果物を含むおやつを持参することはできません。
慣らし保育について
慣らし保育の時間や期間はお子さんの状態により異なります。初日は1時間~2時間からスタートし、3時間、4時間と徐々に時間を増やしていきます。期間は10日程。最大で14日程度みておくと良いと思います。この期間はお子さんが慣れるまでお仕事はお休みされた方が良さそうです。
オムツについて
さくらさくらんぼ保育の特徴ですが、紙オムツではなく布オムツとなります。布オムツは、1日10組程使用するため月齢が低くなるほど洗濯物の量が非常に多くなります。そして、ずりばいをしだした頃から、布オムツから綿パンツへ変えていきます。
上野愛光保育園の園児はおむつ外れが早く、排泄排尿がトイレでできるようになるのも早いです。保育園でしっかりトイレトレーニングをしてくれるので、ご家庭でトレーニングする機会も少ないようでした。
地域でのお散歩や園外活動
お散歩は近くの河川敷や上野ヶ丘墓地公園におでかけしています。年長さんになると、大人の足でも35分かかる距離の文化児童公園にも行くそうです。
そして、園外活動ではさまざまな体験ができるようになっており、佐野植物公園で草滑りをしたり、アフリカンサファリでは動物とのふれあい。国東ではキャンプや海水浴。九重でヤマメ釣りや草千里で乗馬。年長さんは久住や鶴見岳登山など、日常ではなかなか体験できない活動を取り入れています。
保護者の参加行事について
年に3回程保育参観があります。他には親子遠足や3・4・5歳児親子で行われるおもちつき、保護者会との共催の夏祭りがあります。
おわりに
上野愛光保育園では文字を覚える就学前のこの時期に行うべき保育というものを考えてさまざまな努力をされていました。たくさんの体験や経験ができるようになっているので感性が豊かに育ち、子どもたちの自信にも繋がっていきそうです。ここで培ったものが将来価値のあるものになっていくのではないでしょうか。
園庭で自由に楽しそうに遊び、笑顔で元気いっぱいの園児たち。上野愛光保育園で伸び伸びと育っていく子どもたちを実際に見てほしいと感じました。