キッズ

昭和8年に外国人宣教師マレガ神父によって創立され、大分市中心部のビルやマンションなどに囲まれた大通りに面する利便性の高い立地に加えて、平成元年に導入したモンテッソーリ教育が人気を博している学校法人大分カトリック学園認定こども園 カトリック海星幼稚園。令和元年から幼稚園型認定こども園へと移行し、子どもたちの自主性を尊重した教育を展開するカトリック海星幼稚園の特色について、主任の大井先生にお話を伺いました。

まとめてではなく個を大事にする

園の入口にあるマリア像。園児・職員は登園・降園時にお祈りをしています

カトリック海星幼稚園では、キリスト教の愛の精神に基づいて「心の平和教育」を主としてモンテッソーリ教育を導入しながら、子どもたちが自分の意思でやりたいことや自分にできることを選べるように支える教育を実践しているそうです。そこで、モンテッソーリ教育導入後やこども園へ移行後の変化について伺いました。

大井先生:元々は年齢ごとに分かれた横割りクラスでの保育を行なっていましたが、モンテッソーリ教育を導入した後は、満3歳〜6歳までの子どもたちが集まる縦割りクラスへと変更しました。同じ年齢の子が何十人も集まる横割りクラスだった際は、先生の問いかけに対して誰かが答えることで、先生はクラスの子全員が理解できていると誤認していました。

極端な例になりますが、ウサギの絵を見せて「この動物の名前は?」と質問して、数人が「ウサギ!」と答えたとしますよね。実際にその動物がウサギだと判断できたのはその数人だけかもしれないのに、先生はみんなが理解できたものと思い、分かっていない子にまで寄り添えていない場面もありました。縦割りクラスになることで一人ひとりの個性に気づきやすくなり、より子ども達に寄り添えるようになりました。また、年齢の違う子が集まることによって子ども同士で教えあったりする姿も見られます。

モンテッソーリ教育では、幼児期の子どもには敏感期という一生に一度の敏感な感受性を発揮する時期があると言われています。マリア・モンテッソーリという医学博士が、子どもの姿から発達には段階があることを見つけ、「イヤイヤ期」のような時期の頃からのことを「敏感期」と名付けました。園舎が大きいわけではないので赤ちゃんから預かることはできませんが、こども園へ移行して「敏感期」真っ只中の2歳・3歳児も受け入れることになり、子どもたちの発達段階を深く知ることができてとても有難いです。限られた敷地の中でも子どもたちが思い切り体を動かし、頭を使い、様々な心の経験を重ね、子どもらしく伸び伸びと自由に過ごせる工夫を施しながら、成長を見守り続けています。

自分も相手も大事に思いやる心を育てる

聖母祭(聖母マリア様のお祝い)で使用したマリア像

目指す園児像として「よく遊び、みんなと仲良くできる子ども」「強い心、元気な子ども」「積極的で自立している子ども」を掲げているカトリック海星幼稚園。その意図について、それぞれ詳しく説明してくださいました。

よく遊び、みんなと仲良くできる子ども

神様から命をいただいた人間や全ての生き物に対して命を大切にする心を育てていくことです。ただ、お友達と仲良く遊びましょうという意味の「仲良くできる子ども」ではなく、人を大事にしたり「ありがとう」「どうぞ」の心を大事にして譲り合ったり、相手の立場になって考えられるようになるという深い意味を持っています。人を思いやる優しい心・清らかな心を人を大切にしながら培っていけるように関わっています。

強い心、元気な子ども

「強い心」は自分で善悪をきちんと判断して、自分を見失わずに識別する強い心のことで、どんなことも受け入れるという柔軟さも含まれます。時に空気を読んで流された方が良いこともありますが、自分をしっかり持っておかなければいけない場面もあるので、今はどちらなのかが識別できる強い心を培います。

「元気な子ども」はその言葉通り、運動能力も含め健康で心も健全な心身の発達を援助していくことです。神様からいただいた体を元気に使って、家族みんなに喜んでもらい、パワーを与えられる子どもたちを育てていきます。

積極的で自立している子ども

よく遊び、なんでもやろうとする子どものことです。モンテッソーリ教育では、やらされてこなしていくのではなく、自由に自分のやりたいことを見つけて挑戦する心を大事にしています。生涯の中で、人が敷いたレールの上をただ歩いていく自分に合格点を出すのではなく、自分で道を切り開いていくことが大事です。物が溢れている現代では、全く新しい道というものはなかなかありませんが、自分自身の人生を喜べるような生き方ができることが、自立につながるのではないかと考えてます。

教会

教会の中

ステンドグラスにはイエス・キリストの生涯が描かれています

モンテッソーリ教育の5領域

園舎

モンテッソーリ教育は「感覚教育」「文化教育」「日常生活」「数教育」「言語教育」の5領域に分かれています。一つ一つの領域について詳しく教えていただきました。

日常生活

生きていくために欠くことのできない実践生活の練習を行います。例えば、ボタンを留める・ハサミで切る・ノリで貼る・針と糸で縫うなど、指先や腕を充分に使って筋肉運動を調節できる教材を揃えています。その結果、家庭の中でも自分の服のボタンを留めたり、洗濯バサミを使って自分の靴下を干したりすることができるようになります。

小さいうちから指や腕の使い方を学んでおくことで、小学校に進学する段階で鉛筆を使いましょうとなった際に、しっかり持って字を書くことができます。指先などの使い方を学ばないまま鉛筆を持ってみたところで、うまくできないんですよね。そして、できたかできなかったかで評価されるのは、子どもとして悔しいことです。一つ一つしっかり準備をしておくことで、ボタンを留めたりやファスナーを締めたりなどができるようになったらとても嬉しいんですよね。どんな自分も受け入れ、自分でできたという喜びの積み重ねを教具も使いつつ日常生活の中で経験していきます。

日常生活教材

感覚教育

環境から刺激を受けて各感覚器官が磨かれていくため、教材を通して視覚・聴覚・触覚・嗅覚に関して秩序づけたり整理づけたりして、人間として成長できます。例えば、まず「ブロッコリーはこれ」「玉ねぎはこれ」と目で識別して名前を覚え、次の段階として野菜と果物に分けたり酸っぱい・甘いを分けたり比較して整理づけていくと、物の本質を見分けられるようになり、知的活動に繋がるんです。「バナナは何色?」と聞いて「黄色!」と答えられることは、すでに知的活動が始まっているということなんですよね。子どもたちは環境の中から知識をバンバン吸収していますが、どこかで整理づけてあげないとぐちゃぐちゃに詰まったままになってしまいます。

感覚教育の1番の魅力は、自分で間違いに気づき訂正できる力が身につくことです。人から間違いを指摘されると、傷ついたり相手を恨んだりしてしまいがちですよね。もちろんそういった経験は必要ですが、自己訂正の経験を積み重ねていくことで、大人になって間違いを指摘されたときに相手を恨むのではなく、気付ける自分になっていけるという深さがあります。「気付かなかったことを教えてくれてありがとう」という捉え方ができるようになると良いですよね。感覚教育は生き方に影響していく教育だと考えます。

感覚教育教材

数教育

正確にすることで良い文化生活や適切な状況判断ができるようになります。数字を扱うので難しいイメージがありますが、電話番号や住所、誕生日、時間、年齢など、日常生活と数は切り離すことができません。英才教育ではなく、人間として自由に生きるための教育で、詰め込まずに生活の中で学んでいきます。

例えばある児童は「3人兄弟でそれぞれにお菓子を一つずつ分けるには3つ必要」ということは理解しているものの、並んでいる数字のうち「3」がどれかわからないという状況でした。教材を使いながら知と言語を結びつけることによって、数学的思考が形成されていきます。数学には法則性があるので、法則性に出会いながら物の仕組みがわかるようになり、従っていくことによって心をコントロールできるのです。数に触れることで心が落ち着くこともあり、物の仕組みがわかることで筋道を立てて物事を考えることができ、問題解決能力が育ちます。

数教育教材

言語教育

社会生活の基礎である言葉は共同体の中で生まれ、コミュニケーションの大切な手段です。生まれてから環境の中で無意識のうちに吸収して形成言語を育成していくので、いつの間にか小さい子でも言葉の意味を理解できるんです。たくさんの言葉を与える必要がある0〜6歳の間に「恥ずかしいからそんなこと言わないで」などと言いすぎると、自分の気持ちを表現できなくなってしまいます。

「言って良い?悪い?」ということばかりが気になって、大人になって自分の気持ちが言えなかったり、変に空気が読めず失礼なことを言ってしまったりすることもあります。ある児童のお母さんが元々東京の方で、家で子どもが大分弁を喋り出して、みんなと打ち解けて幼稚園が子どもの居場所になっているとわかり、嬉しくて涙が出たと話してくれました。今時の言葉を使っていて嫌だなと感じることもあるかもしれませんが、一時的なものだと捉えられると子どもの気持ちに寄り添えるのではないでしょうか。

言語教育教材

文化教育

人間は何百年何億年と続いていて、過去の生物や地球、宇宙からたくさんの恩恵を受けているということを伝えていく教育です。地図を見たり、歴史として自分の赤ちゃんの時の写真を見て振り返ったり、植物の育ち方を学んだり、家族の愛について深く知ることで、自分の世界を広げながら命への畏敬の念や神秘に目覚め、より豊かな人間に育っていきます。

モンテッソーリ教育は総称して心の平和教育であり、何かができるようになったりリーダーになったりするのではなく、人の気持ちを理解し、自分の歩み方がわかるようになります。

文化教育教材

食の大切さ・ありがたさを学ぶ

日常生活の中で多くの経験をしながら成長を促しているカトリック海星幼稚園では、給食を通して子ども達に教えていることはあるのでしょうか。

大井先生:給食は魚国総本社さんが作ってくれていて、旬の野菜にはどんな栄養効果があるのかを可愛くポスターなどで紹介する、世界の料理を提供する、魚国お米丸というキャラクターと一緒にフードトラックの窯でピザを焼くなど工夫してくださいます。また、その日の給食メニューは決まっていますが、天候や子どもたちの様子によって味付けを変えたり量の調整をしてくれたりと、心遣いをしてくださいます。定期的にある給食会議では調理員さんをはじめ管理栄養士さんや上層部の方なども来てくださり、子供の好きなメニューや職員の意見なども聞いて献立メニューを考えてくれるので有難いです。

また、週に1度はおにぎりの日を設け、いつもより質素な食事だけどおにぎりを食べられるだけでも有難いということを伝えています。世界中の戦争で家や家族を失うなどして食事ができない子どもたちのために、カリタスジャパンという組織を通し、おかずを我慢した分のお金を「おにぎりの日献金」として園児のご家族に献金活動へ参加していただいています。

カトリック海星幼稚園の施設情報・保育詳細

カトリック海星幼稚園
大分県大分市中央町3丁目7−30
097-534-4840
施設情報を見る

運営主体

大分カトリック学園が運営主体で、大分市中央町にあるカトリック海星幼稚園をはじめ、同市内の明野・鶴崎・坂ノ市、臼杵市、津久見市、佐伯市、日田市、玖珠町の9つの幼稚園を運営しています。

クラス編成・中途入園

「さくら」「ゆり」「チューリップ」「ひまわり」の4クラスで、年長・年中・年少・満3歳児が兄弟のように過ごしています。中途入園は、その年によって締め切っている学年もありますが、空きがあれば可能です。

保育時間

1号認定:月曜〜金曜 7:30〜14:00
2・3号認定:月曜〜土曜 7:30〜18:30(延長保育は19:30まで1回100円)

給食

1号認定:第1月曜はお弁当持参、第2〜5月曜はおにぎり持参
     火曜〜金曜は給食
2・3号認定:月曜〜土曜は給食、第1月曜のみお弁当持参

1号認定の一時預かり

仕事や急用で子どもが1人でお留守番するような場合に保育のある日と春休み・夏休み・冬休みに、園で預かります。
延長保育時間:通常保育終了後〜18:00、長期休業中は8:00〜18:00
利用料金:保育終了後1回につき500円とおやつ代50円
     長期休業中は半日500円とおやつ代50円、1日1000円とおやつ代100円
     月額の場合は8月15000円、3月10000円、その他の月7000円
     (各月額+おやつ代1000円)
※お迎えが18:00を過ぎた場合は違約金として1000円徴収しますので、お気をつけください。

諸費用

受け入れ準備金:33000円
施設整備費:10000円
施設維持費:毎月500円
制服・保育用品・通園カバンなど:実費
(制服44000円程度、用品3歳児13000円程度、用品4歳児18000円程度など)

保護者会費:年2000円(変更の可能性あり)
冷・暖房費:7月・12月3000円
給食代:毎月1号認定4800円、2号認定5600円(変更の可能性あり)
日本スポーツ振興センター共済給付負担金(保険):年240円(3号認定は300円)
遠足代(貸切バス・入場料):実費
月刊絵本:毎月420円
アルバム代(5歳児のみ):毎月1250円、3月のみ2250円
夏休み中の教材費:375円

※別途諸費用あり
※制服や通園カバンなどはお譲り会にて卒園生・在園生から譲っていただくことも可能です。

おむつ・お布団

2・3歳児、年少入園でおむつが取れていない園児はおむつが必要です。園生活の中で徐々にパンツへと移行していきますので、入園前に無理にパンツへ移行させる必要はありませんので、おむつのまま入園してきてください。

また、2・3歳児と預かり保育でお昼寝をする年少園児はタオルケットやブランケットなど、時期に合わせてお持ちください。園に簡易ベッドがありますので、敷布団は必要ありません。

送迎

原則保護者の送迎で、年長・年中は帰りのみ路線バスで降園可能です。職員が所定のバス停でバスに乗せますので、園児が下車するバス停に保護者がお迎えをお願いします。

駐車場

教会の駐車場がありますが、送迎時のみ利用可能です。お借りしているため、長時間の駐車はご遠慮ください。

参観

宗教行事や保育参観、体育指導、運動会、クリスマス会など月1回は参観行事があります。基本、保護者1〜2名の参加が可能です。

連絡網

園児管理アプリ(らくらく連絡帳)と保護者LINEを使用します。遅刻や欠席、延長保育などは園児管理アプリにて連絡していただきます。

園の見学

年間を通して、体験会2回と入園説明会1回、見学は随時行っています。見学の場合は園行事がない日の9:00〜9:30に、園児が教材を使用していたり園庭で遊んだりするなど自然体の姿を見てもらっています。電話にて予約をお願いします。

園での習い事

サッカー・ライフキネティック・バトンをメインに年中から習い事が可能です。

海の会・星の会

海の会は保護者会で、毎年4月に各クラス・各学年ごとに役員を選出します。園の行事などでの誘導やお手伝いなどを行います。

星の会は卒園した小学校1年生〜6年生までが毎月1回幼稚園に集まる会で、中高生が来ることもあります。3・4年間共に過ごした気を張らなくていい友達と会える故郷のような場所で、約3時間ではありますがみんな楽しく過ごしています。アロマ教室や夏祭り、運動会などをします。

おわりに

創立100周年に向けて残すべきところは残しつつ、年々増えてきた働くお母さんたちのサポートや時代に合わせた行事など変えていくべきところを見極めている最中だそうです。そして、いつでも子どもたちが帰って来られる場所であり続けたいと言います。保護者や職員の中には卒園生も多く、敷地内に大きな教会があるのもポイントで、静寂の中で聖歌を歌い心を落ち着かせ、神様に委ねるという経験ができるからこそ戻ってきてくれるのではないでしょうか。

単に、お友達と遊んで先生とお話をして給食を食べるだけの園生活ではなく、自分でやりたいことを決めて一生懸命に取り組む姿を見て私自身も参考にしたいと感じました。色々なことをたくさん吸収できる時期に、将来にも役立つ学びを教えてくれるのはとても有り難く、子どもたちの成長が楽しみですね。

随時、園の見学を行なっているので、子どもたちの自然体の姿や園の雰囲気を実際にご覧になってはいかがでしょうか。