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日本の公教育とは異なる‘‘もう一つの学校‘‘と称されるのがオルタナティブスクール(Alternative School)です。「学校に行くのを嫌がる」「型にはまった教育に息苦しさを感じる」、そういった生きづらさを抱える子ども達の新たな選択肢として今注目されています。

その中でも大分県豊後大野市にある「ここのね自由な学校」は、自分で幸せな人生を選び取る力をつけるという、学習だけではない子どもがこれからの人生を生きるために大切なことを学ぶことができる学校として、遠くから通う生徒もいるほどだとか。そんな今注目のここのね自由な学校を紹介します。

元酒蔵を学校として蘇らせた「ここのね自由な学校」

授業風景

授業風景

豊後大野市大野町にあるここのね自由な学校は、明治創業の元酒蔵を校舎としてリノベーションし開校されました。対象は6歳から15歳までであり、令和3年時点で13名の生徒が在籍しています。代表の山下浩二・百華ご夫婦と秋篠奈菜絵さんの3人で理想の学校を作りたいと始めたこの学校は、どこか懐かしい空気が流れる場所です。
 

自分らしく生きるため‘‘わたしの答えを創る‘‘

ここのね自由な学校の理念は‘‘わたしの答えを創る‘‘です。公教育では決められたカリキュラムや時間割の中、集団で行動することを求められますが、ここのね自由な学校では全て自分で決めて行動することができます。何をするにも大切なのは、
 
「今自分が何をしたいのか」
 
こころの声に耳を傾けながら、自分が本当にやりたいことを選び決定し、実行する。自分の決定したことが全て上手くいくとも限りません。でも自分で決めたことであれば、どんな困難でも工夫し乗り越えようとする姿勢が生まれ、そしてその結果を振り返り学ぶことで、また次の挑戦へと飛び出していく。その繰り返しの中で、どんな環境でも自分の望む人生を生きることができる「わたしのこたえ」を創ることをここのね自由な学校では大切にしています。
 
また、ここのね自由な学校ではいろんな年齢の子どもが対等な立場で一緒に過ごします。もちろん大人も含めてみんな対等な立場。ぶつかることももちろんあります。でも話し合いでお互いの気持ちを受け止め相手の価値観を知ることで自分の自由だけでなく相手の自由も尊重することができるようになるそうです。
 

カリキュラムとみんなで創る学校のルール

ここのね自由な学校ではこれまで基本的なカリキュラムはありませんでした。それはサドベリーバレースクールの教育方針である、子どものもつ好奇心に大人が信頼と責任を与えれば子どもは自分で育つということをもとに、
 
‘‘やってみたい‘‘が子ども達の中から生まれるのを待つ
 
という姿勢を大切にしていたからです。ただ、日々子ども達と活動を深める中で、大人が何か活動を提案した時に、子ども達が生き生きと学ぶ姿勢を感じ、大人が大切に感じることを子ども達に提案してみてはという思いになったそうです。もちろん参加は自由です。試しに学習を取り入れてみたところ、驚いたことに自主的に宿題をしてくる子や、これまで勉強を嫌っていた子どもからとめどなく質問が溢れてくる。そんな場を目にしたことで、サドベリー教育をベースに、基礎学習とプロジェクト学習を取り入れた今のカリキュラムが完成しました。
 

カリキュラムとして国語・算数・英語(英語は高学年から)3つの基礎学習時間が午前中に設けられています。学習を進める中で、月に1回学習計画をたてて自分の学習ペースを振り返り、次の目標を決めます。
 
ここのねでは、学年に捉われず自由進度で行う学習を通して、1人1人の「できた!」「分かった!」に寄り添い教えることで子ども自身の学習意欲を尊重してくれます。
 
そして、ここのねでは「土づくり」という校内ミーティングの時間があります。土づくりは学校のルールを皆で話し合い決めることです。話し合いの内容は掃除当番から学校で動物を飼うかどうか、また講義を見学する時のルールまで、大人も子どもと同じ立場で意見を出し合い全員が当事者として主体的にルールを決め学校を創っていくのです。
 

魅力がいっぱい。ここのねクリエイター

ここのねでは外部講師として、ここのね自由な学校の理念に共感し子どもにさまざまなことを教えてくれるここのねクリエイターがいます。これまでに砂アートや音楽、スイーツ作りなどさまざまなその道のプロであるクリエイターさんが関わってくれたそうです。現在定期的に行われているのは、ヨガと性教育が必修で、音楽と工作は選択となっているそうです。
 
また子ども達から「〇〇なことを学びたい」という要望が上がれば、子ども達がここのねクリエイターさんに直接交渉することもあるんだとか。
 
小さい頃に経験する「本物の体験」は大きくなっても記憶に残る貴重な体験ですね。
 
【ここのね自由な学校】
対象:小学1年生~中学3年生
代表:山下浩二
場所:豊後大野市大野町田中2400
URL:https://www.kokononeschool.com/
 

大分県内にあるオルタナティブスクール

大分県内にあるオルタナティブスクールを紹介します。それぞれの施設には個性的な特徴がたくさんあります。見学や体験入学もありますので、一度訪れてみることをおすすめします。
 
【一般社団法人 畑とキャンプの自由な学校 みんなの学校】
‘‘自分になり、自分が居場所になる学校‘‘を大切にしており、子どもが日々の活動の中で感じる「今ここ」の気持ちを尊重し、自由を保障することで一人一人の感性が育まれ、自己肯定感を取り戻し自分らしく生きることを応援します。
対象:小学生
代表:戸高 諒
場所:大分市机張原1857-2みんなの学校事務所
TEL:070-4480‐1328
URL:http://min-nano.2-d.jp/
 
【理科フリースクールマイム】
理科の分野で強みを伸ばしたい親子の想いに寄り添い、「モノつくり・プログラミング・科学」をカタチにする中で、自分は大切な存在であると感じられる居場所作りを目標としています。
対象:小学5年生~高校3年生(18歳)まで
代表:小西忠司
場所:大分市高城新町3-22ユキビル201
電話:097-547-8850
URL:https://uplace-oita.com/
 

おわりに

オルタナティブスクール含むフリースクールに通っている子は、全国の不登校の子の全体から見ればまだまだ少数です。ここのね自由な学校は、少しでも学校に通えない多くの子ども達の場所となるべく、教育委員会や各所に現状を伝え連携を図り、いずれはここのね自由な学校を一条校にしたいと考えているそうです。ここのね自由な学校では体験入学や説明会などを随時行っています。
 
大分県でオルタナティブスクールやフリースクールをお探しの際は、まず体験されてみてからお子様が心から自分らしくいられる学校を見つけられてみてはいかがでしょうか。

ここのね自由な学校
大分県豊後大野市大野町田中2400
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